お盆が過ぎ、朝晩は涼しい風が頬を撫でる心地の良い八月下旬。

本日のお客様は、私が以前勤めていた青山のへアサロンでお会いして以来、約二年半振りです。

ネイリスト兼サロンオーナーでいらっしゃる嶋脇さんは74歳。普段はご自身でカットとカラーをメンテナンスされていらっしゃいます。服飾の学校を卒業後、新卒で入社した百貨店のファッションのお仕事に始まり、結婚後は公共施設の広報デザイン、子育てを経て現在に至ります。

やりがいのあるお仕事、趣味のゴルフ、アクティブなご友人に囲まれる嶋脇さんは、はつらつとしたエネルギッシュな雰囲気。

またファッションはキラキラしたものがお好きで、好きな物を身に着けているその姿は、メンテナンス前ですら視線が奪われる程。

メガネフレームの装飾も、輝きが落ちてくると百貨店にメンテナンスにお持ち込みになるそうです。道具を大切に扱うその価値観に、嶋脇さんの人生哲学が感じられます。

過去にはグレイヘアを検討したこともあったそうですが、ブロンドカラーがご自身に似合うと感じ、ご自分でカラー、ハイライトを入れていらっしゃいます。光に当たって透ける色合いがとてもお気に入り。

普段はホットカーラーでスタイリングして、ヘアスタイルにボリュームと毛流れを作っています。

今回、ヘアスタイルのオーダーはお任せとのことでしたので、嶋脇さんのゴージャスな印象を引き立て、小柄な身長とバランスの合うショートヘアをご提案をさせて頂きました。

毛量の多い毛質を活かしたボリュームを作るべく、毛量調節は骨格を美しく見せる為に必要な耳後ろと襟足のみ。代わりに切り口はレザーカットで柔らかな切り口を目指します。

普段身に着けている眼鏡に合わせて、ヘアスタイルの重心を目の高さに設定。

顔周りの長さは横顔が美しく見えるよう、リップラインの位置を狙い、輪郭に沿って前下がりのラインにカットを施します。

カットの施術が終わり、セット用ローションを全体に塗布。ホットカーラーとマジックカーラーで全体を巻き下ろします。

カーラー良さは根元から弾力のあるボリュームが出せること。コテアイロンもカールを作るツールの一つでですが根元の立ち上がりまでは出すことができません。年齢と共に下がる輪郭や体の重心を引き上げるのに、カーラーはとても役立つアイテムです。

ブロンドカラーが美しく輝くショートレイヤースタイル。

カーラー仕上げで生まれる艶とカール、アクセサリーの輝き、黒のモダンな装いが共鳴し、エレガントな雰囲気を引き立てます。

リップラインに設定した顔周りの長さと、目の高さに設定したヘアスタイルの重心が、輪郭を引き上げ、若々しく快活な表情に変わります。このヘアスタイルをお仕上げした際に生まれるこのお客様の表情が、デザイナーとしての私自身のアイデンティティが満たされるかけがえのない瞬間です。